日本の予防歯科は遅れている…?つまようじから読み解く、世界のデンタルケア事情

日本の予防歯科は遅れている…?つまようじから読み解く、世界のデンタルケア事情


日本では当たり前のように使われている、つまようじ。飲食店に行けば大抵テーブルの上に置いてありますし、お弁当についている割り箸にも、必ずついていますよね。

それらを目にして、「日本には気遣いの文化が根付いている」と思う方も多いかもしれません。確かにそれは間違いではないでしょう。しかし、歯を守る予防歯科の観点から考えると、決して日本のつまようじ文化は世界と比べて進んでいるとは言えません。

今回は、日本と各国のデンタルケア事情を、「つまようじ」から紐解いてみたいと思います。

▼参考文献
『楊枝から世界が見える 楊枝文化と産業史』
著者:稲葉修
出版社:冬青社

 

歯のお手入れに「丸楊枝」を使うのは、日本人だけ?

カクテルピック
日本で食後の歯のお掃除に使われる一般的なつまようじは、丸い形をしていますよね。しかし、世界的に見ると、この丸いつまようじはCOCKTAIL PICK(カクテルピック)と呼ばれ、料理用に使われるのが一般的です。欧米では、オードブルなどのつまんで食べる料理にこの丸いつまようじがよく登場します。

一方、海外で歯のお掃除に使われるのは、平たい形のつまようじ(平楊枝)です。英語のつまようじ(TOOTH PICK)は、この平楊枝のことをさします。大正時代には日本にも広まり、その珍しさから一時的に流行しました。しかし、丸いつまようじに慣れていた日本人には受け入れられず、いつの間にか姿を消したそうです。

現在、平楊枝を使わないのは世界で日本だけ。料理用の丸いつまようじを食後の歯の掃除にも兼用し、ムリに歯の隙間に入れて歯と歯茎を傷めているのが、今の日本人の現状なのだそうです。

世界で使われている「平楊枝」とは?

平楊枝Photo by Jeroen Bennink

細長い形の平楊枝は歯と歯の間に入りやすく、汚れを取りやすいという特徴があります。あまり強度がなく、使用時に力を入れるとすぐ折れてしまいますが、それ以上歯に負担がかからないので歯や歯茎を傷つける心配もありません

日本でつまようじと言えば、「丸くて丈夫」というイメージがありますが、海外では「平たくて折れやすい」と認識されているのです。

世界のつまようじ事情

アメリカ編

アメリカPhoto by Ian Sane

アメリカでは、食後に一般的に平楊枝が使われています。テーブルではなく、お会計をする場所に1本ずつ包装されたつまようじが置かれており、人々は支払いを済ませた後にそれを手にとって外に出るのです。肉料理をよく食べる文化が背景にあるからか、ミントやシナモンなどの香りがついたつまようじもよく出回っています。

歯の重要性は、ものを噛むことだけではありません。特にアメリカではその外見の美しさが重視され、歯や歯並びは、その人の知性や教養を表すと考えられているそうです。審美歯科でホワイトニングクリーニングなどを受けるのは、一般人にとってもごく当たり前のこと。「虫歯ができたら歯医者に行く」という日本人とは、意識にかなり差が開いていると言えます。

北欧・ヨーロッパ編

北欧の風景Photo by Miguel Virkkunen Carvalho

一足先に高齢化社会を迎えた北欧諸国は、予防歯科の先進国です。歯は悪くなってから治療するのではなく、悪くならないように日頃から気をつけるという考え方が、一般にも広く浸透しています。その予防歯科の観点からつくられたのが、三角楊枝です。歯や歯茎を傷めず、歯のお掃除や歯茎のマッサージをすることを目的として、昭和35年頃にノルウェーで生まれました。三角楊枝は、歯と歯の間の形に合わてつくられているので、歯ブラシでは届かない部分の汚れも取り除くことができます。さらに、歯周病や口臭の予防にもつながるとされています。

ちなみに、日本では大抵つまようじはスーパーの台所用品コーナーに置いてありますが、北欧ではデンタルケアグッズとして当たり前のように薬局で売っています。また、ヨーロッパの飛行機のファーストクラスとビジネスクラスでも、三角楊枝が使われているそうです。

▼海外製の三角楊枝
海外の三角楊枝(出典:The Natural Dentist

アジア編

タイの仏像Photo by melenama

欧米に比べて、アジアはデンタルケアの文化が遅れていると思う方もいるかもしれません。しかし実は、最初につまようじ文化が発展したのはアジアでした。お釈迦様が木で歯を磨いていたことから、その習慣が信者に広まり、仏教と共に日本にも伝わってきたと言われています。歯磨きに使用する枝のことをサンスクリット語で「ダンタカーシュタ」と言い、これが中国で「楊枝」と訳されました。また、「ダンタ」は英語の「デンタル」の語源だそうです。

今でも、多くのアジア諸国で歯木(木の歯ブラシ)が使われています。日本人の目には原始的に映るかもしれませんが、材料となる木にはフッ素やタンニンが多く含まれており、実は歯にとても良いのです。(フッ素は歯をコーティングして虫歯を予防し、タンニンは歯茎を引き締める効果があります。)つまようじはと言うと、やはり平楊枝が一般的です。やや粗雑な見た目ですが、「つまようじ文化がまだ追い付いていないのね…」とは思うなかれ。丸いつまようじしか浸透していない日本のほうが、実は遅れているのですから。

おわりに

デンタルケアグッズPhoto by Steve Snodgrass

日本には「つまようじ=日本の文化」と思っている方も多いかもしれませんが、決してそんなことはありません。世界に目を向けると、歯を傷つけずに汚れがよく取れる平楊枝が一般的であり、予防歯科先進国の欧米では、歯周病を予防しながら歯茎のマッサージまでできる三角楊枝が日常文化に浸透してきています。

歯は一度失ったら元には戻らないので、私たちももっと自分の歯を守ることに対して真剣にならないといけないのかもしれません。この機会に、ご自身のデンタルケアを見つめ直してみてはいかがでしょうか。また、予防歯科の考え方を取り入れ、歯を失わないためにも定期的に歯科医院での検診やクリーニングを受けることをおすすめします。

 

ホワイトエッセンス 歯の健康サポート

(編集・執筆:サムライト


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ホワイトエッセンス 2015年8月18日