女性誌などでも取り上げられ、今、密かなブームとなりつつある「舌トレ」。一体、本当にウワサ通り、健康や美容によいエクササイズなのでしょうか?そして、どんな風にやるのが効果的なのでしょうか?今回、お口の専門家・歯科医師の安部美紀先生に取材を行い、お話を伺ってきました。
舌の筋肉が衰えると、口内や見た目に悪影響が…
—最近、女性の間で舌を鍛える「舌トレ」が流行っているそうですが、専門家の目から見ても、舌トレは有効なのでしょうか?
安部:はい。専門的な立場からも、舌の筋トレは非常に有効であると言えます。ほとんどの人は舌の動きを意識せずに生活していると思いますが、実は、腕のように「動かしている」という実感はなくても、舌は本能的に動いているんです。発音するのも、食べ物を飲み込むのも、舌がないとできません。
—舌ってそんなに重要な役割を果たしていたんですね…。
安部:そうなんです。舌は7種類の筋肉で構成されていて、それが複雑な運動を可能にしています。また、舌の根元から首周りの狭い範囲だけで、何十種類もの筋肉があります。ですから、これらの筋肉をトレーニングしてあげると、様々なメリットが生まれるわけです。舌を活発に動かすことで唾液がよく出て、免疫力の低下の予防、間接的に歯周病や虫歯予防にもつながります。逆に、舌が普段からうまく動かせず、衰え気味になると、口内環境が簡単に変わってしまうんです。
—舌の筋肉が衰えた状態って、たとえばどんな感じですか?
安部:気が付くと無意識に口をポカーンと開いたままになっている人や、舌で後ろから押すように前歯に触れるのが癖になっている人、滑舌が悪くてサ行・タ行が言いにくい人などは、要注意ですね。舌の筋肉が怠けてしまっている可能性があります。
「舌トレ」の効果は、歯ヂカラをつけるだけではない
安部:それから、舌の筋肉が衰えると、見た目にも影響が出てきてしまいます。出っ歯になったり、歯並びが悪くなったり。
—舌が歯並びにも影響しているんですか?
安部:はい。実は歯のアーチって、主に外側のほっぺの筋肉と、中側の舌の筋肉とでバランスをとって保たれているんですよ。歯茎や歯を支える骨ってそんなに強くなくて、ちょっとした力で簡単に変わってしまうんです。しかも、舌の筋肉って意外と力があるんですよね。だから歯の裏を舌で押す癖があると、出っ歯や歯並びの悪化につながります。
—舌で歯を押すクセがある人は、危ないということですね。
安部:そうですね。あと、口元に力を入れないでポカーンとした顔をしがちな人も、要注意です。口輪筋が緩んでくると、舌が前に出てきやすくなります。逆に、舌を正しい位置においていれば、歯並びの悪化は防げるんですけどね。
—美容面でも「舌トレ」の効果があるって本当ですか?
安部:これも本当です。まず、舌を動かすことで唾液の分泌が盛んになり、口臭を予防できます。それから、舌だけでなく口元や首元の筋肉も鍛えられるので、ほうれい線や二重あごなどのたるみ改善にもなります。さらに、フェイスラインが引き締まることで、リフトアップや小顔効果も期待できますね。
—それはすごいですね!やらなきゃ損、という気がしてきました。
歯科医師が勧める「舌トレ」の方法
—では先生、いよいよ「舌トレ」の実践方法について教えていただけますか。
安部:わかりました。ただ、トレーニングを始める前に、まずは本来あるべき舌の正しい位置を認識することが大切です。正しい位置とは、口を閉じたときに、舌先が上の前歯の歯茎に触っている状態。舌が前歯に触れてはいけません。私は以前、矯正で歯並びを改善したのですが、担当医に舌の位置を指摘されてからは、歯並びが元に戻らないように、常に舌をその位置で保つよう意識しています。
—舌にも正しい位置があったんですね。今まで意識したことがありませんでした。
安部:その小さな意識が、ものすごく大切なんです。舌の力を過小評価してはいけません。
さて、次に「舌トレ」の具体的な方法ですが、専門家によって勧める方法は様々です。上を向いて、舌をべーっと突き出してぐるぐる回したり、鼻まで付くように思い切り伸ばしたり。でも、実際そういうのって、人前では恥ずかしくてできませんし、面倒くさがりな人は「今はいっか」と思って、すぐやらなくなってしまったりすると思います。
—うぅ…。今、私の未来が読まれた気がしました。
安部:でも、私もすごく面倒くさがりなんですよ。実際、今のは体験談ですから(笑)だから、初心者でも、私のようにズボラなタイプでも続けられる方法はないかなと探していたんです。そこで見つけたのが、とっても簡単なベロ回し体操。この体操は、二重あごや顔のゆがみ、頭痛の原因となる噛み合わせまでも、自分で改善できる方法として注目されています。
—ズボラ女子でも続けられる「ベロ回し体操」!ぜひ教えてください!
安部:本当に簡単ですよ。方法はこんな感じです。
【1】口を閉じ、舌で外側の歯の周りをぐるぐる回す。
【2】右回り・左回りをそれぞれ50回ずつ行う。
【3】1日3回、朝・昼・晩が理想。ただし、無理のない範囲で。
非常にシンプルな動きですが、やってみると舌や舌の根元、フェイスラインまでかなり疲れてきます。
—早速やってみます!
おわりに
(編集部スタッフ、左右50回ずつの「舌トレ」に挑戦。)
—先生、50回ってめちゃくちゃキツイんですが…。アゴが、アゴが痛い…。
安部:(笑)たしかに、10回を超えた辺りから、もうしんどくなってきますよね。50回が無理なら、20回や30回でも大丈夫です。ご自身のペースで進めてください。
—それ、もっと早く言ってください(涙目)
安部:すみません(笑)でも、限界まで近づくと、普段はあまり動かさない顔まわりの筋肉が使われたことが強く実感できます。続ければ、リフトアップやたるみ改善の効果もバッチリ期待できそうですね!
—たしかに!舌をべーっと出さないので、人がいなければ外でもできそうです。空いた時間を使って、今年の夏は小顔美人を目指したいと思います。先生、本日はありがとうございました!
安部:夏なら日傘の中で、冬ならマスクの中で。どこでもササッとできるのも大きな特徴です。ぜひ頑張ってみてくださいね。どうもありがとうございました。
(編集・執筆:サムライト)