指しゃぶりといえば、赤ちゃんの仕事のようなもの。生後しばらくすると、どんな赤ちゃんも自然と指しゃぶりを始めますよね。
その姿は非常に愛らしいのですが、世の中には「指しゃぶりはよくない行為だから、早めにやめさせるべき」「無理にやめさせると発育に影響が出る」など、様々な考え方であふれています。一体、ママは赤ちゃんの指しゃぶりについてどう対応したらよいのでしょうか?今回は歯科医師の安部美紀先生に、専門家としての意見を伺いました。
指しゃぶりにも役割がある
指しゃぶりは、単なる赤ちゃんのクセではありません。実は発達段階ごとに大きな意味を持っています。
【胎児期】おっぱいを飲む練習
赤ちゃんが指しゃぶりを始めるのは、実は生まれてからではありません。ママのお腹の中にいる頃から、指しゃぶりをする姿が確認されています。これは本能的なもので、ママの乳首を探し、おっぱいを飲む練習をしているからだというのが有力説です。
実際、ほとんどの赤ちゃんは、生まれた直後からママのおっぱいに吸い付くことができます。それは、唇に触れたものに反射的に吸い付く習慣が確立されているからだと考えられているのです。これを哺乳反射といいます。
【乳児期】体と心の発達をサポート
個人差はありますが、ほとんどの赤ちゃんは生後2~3ヶ月後までには指しゃぶりを始めます。また、その最中に手をじっと見つめることもあるでしょう。この時期になると、赤ちゃんにとっての指しゃぶりは、また別の役割を持ち始めます。
それは、自立への第一歩です。指しゃぶりによって、赤ちゃんは自分の目と手、手と口が協調しているということを理解するようになります。さらに、離乳食が始まると、また指しゃぶりの役割は変わります。今度は大きな環境の変化による不安を鎮めるために、指しゃぶりをするようになるのです。
幼児期の指しゃぶりには要注意
赤ちゃんの指しゃぶりは、心身両面の発達のために、必要不可欠な行動です。しかし、幼児期以降にも指しゃぶりが続くようであれば、注意しなければなりません。
なぜ指しゃぶりをやめない子がいるの?
幼児期になると、外の世界にどんどん興味を持つようになり、指しゃぶりをする機会は自然と減るものです。しかし、中には昼間の遊びの最中に指をしゃぶり続けている子もいます。そういう子は、発達状況や生活環境に何かしらの原因があると考えられます。
たとえば、緊張しやすい子や、感情のコントロールが苦手な子。精神を落ち着かせるための手段として、大きくなっても指しゃぶりを続ける傾向があるそうです。また、家庭や人間関係のストレスから、指しゃぶりが続いてしまうこともあります。
歯科医師から見た、指しゃぶりの影響
ホワイトエッセンスの安部美紀先生に、歯科医師の立場から見た指しゃぶりの影響について伺ってみました。
安部:1〜2歳頃までは生理的な現象ですので、無理にやめさずに見守りましょう。しかし、指しゃぶり(=吸指癖)を長く続けすぎると、癖になってやめられなくなってしまいます。そうすると、将来の口内環境を左右するくらい口腔内に悪影響を及ぼす恐れがあるのです。
歯の噛み合わせや歯並びに影響が出るほか、成長発育期に食べ物を上手に噛めなくなったり、飲み込みにくくなったり、発音が舌足らずになったり、サ行・タ行・ダ行・ナ行・ラ行の発音障害が出たり、口呼吸や口がポカーンと開く癖が出たりと、様々な影響が考えられます。
3〜4歳までには自然にやめていけば、咬合異常は自然に治りやすいとされています。しかし、逆に5歳以上になっても習癖をやめられないと、治療が必要なほど治りにくくなります。5歳を過ぎると、永久歯に生え変わるからです。
指しゃぶりの癖が治らない原因はいろいろありますが、特に夜泣きの防止などでよくおしゃぶりを常用する家庭では、なかなか指しゃぶりを止めないことが多いといわれます。子育ての手抜きとし便利性からだけで、おしゃぶりを使用するのはやめましょう。もしやむを得ず使用する場合は、噛み合わせの異常を防ぐために注意が必要です。
子どもの指しゃぶりに、親はどう対応すべき?
では、我が子の指しゃぶりに対して、親はどんな行動を取ればいいのでしょうか。
乳児期は他に興味をもたせる
乳児期の指しゃぶりは成長のために必要な行為。無理に「やめさせよう」と考えてはいけません。とはいえ、何もしなくてもいいというわけでもありません。大きくなってからもクセとして残らないように、無理強いしない範囲で対応しましょう。
たとえば、舐めても安全なおもちゃを用意してあげると、指以外にも興味を持つようになります。絵本を読んであげるのもいいでしょう。さまざまなものに興味を持たせることで、指への執着をなくしてあげるのです。そうすれば、スムーズに指しゃぶりから卒業させることができるでしょう。
幼児期は原因から考えて
幼児期の指しゃぶりは、できるだけ早めにやめさせることをおすすめします。しかし、頭ごなしに叱ってやめさせようとしても、根本的な解決には繋がりません。「なぜ指しゃぶりをやめないのか?」という、原因を考えることが大切です。
生活環境による不安やストレスが原因なら、それを取り除いてあげることができれば、自然と指しゃぶりがなくなっていく可能性も大。親子のスキンシップをより充実させたり、外遊びを増やしたりして、様子を見てみましょう。
幼児期以降
学童期以降も指しゃぶりが続くような子は、小児科医や小児歯科医にかかったほうがよいでしょう。情緒的な面を考慮して、まずはかかりつけの小児科医に相談してみてください。
おわりに
子どもの成長過程を考えると、指しゃぶりは決して悪いことではありません。しかし、やはりずっと続けると口内環境に悪影響を与える恐れが出てきます。おしゃぶりを使っていたり、指しゃぶりを頻繁にしたりしている子にも、小さなうちから声をかけたり一緒に遊んだりして、親子のふれあいを大切にするようにしましょう。子どもがしたいこと・してほしいことを満足させるように心がければ、指しゃぶりは自然となくなっていくそうです。小さなお子さんをお持ちのママさんは、ぜひ今回の内容を心に留めて、目の前の我が子に向き合ってくださいね。
(編集・執筆:サムライト)