「甘いモノばっかり食べていると虫歯になるよ」というフレーズは、子どもがおやつを食べ過ぎるのを大人が抑制する常套句の1つ。しかし一方で、「虫歯は唾液でうつる」という説もたびたび耳にするような気が…。
一体、どちらが正解なのでしょうか?その真相を確かめるべく、今回はホワイトエッセンス銀座の統括院長をつとめる歯科医師の岡本真理子先生に、虫歯ができる原因について伺ってきました。
「虫歯菌」は、甘いモノが大好き
—先生、そもそも虫歯ってどうやってできるんでしょうか?みんな知ってるようで、実際は詳しく知らない人も多いと思うんですが。
岡本:「甘いモノを食べると虫歯になる」とよく言われますが、それはある意味正解です。糖分を摂ると、口内にいる虫歯菌がそれを分解します。その分解の際に、「酸」を出すんですね。この酸こそが歯が溶ける要因、つまり虫歯の成り立ちです。
虫歯と聞くと、歯が黒っぽくなるイメージを持っている方も多いと思いますが、実はそれだけが虫歯ではありません。酸で表面が少し溶けて白っぽくなった状態のことを、「初期虫歯」と言います。それがだんだんザラついてきて、黄色っぽくなったり茶色っぽくなったりして、最終的には黒く穴が開きます。進行状況が変わるだけで、どの段階も虫歯であることに変わりはないんですよ。
—では、口を開けたときに全部白い歯だったとしても、もしかしたら虫歯があるかもしれないんですね。
岡本:そうですね。歯が白いままで、痛みを感じなくても、少しずつ虫歯が進んでいる可能性があります。それをそのまま放置しておくのはいけませんね。痛みが出て「虫歯がある!」と認識する頃には、かなり症状が進行してしまっていることも多いですから。そうなると、もう神経を取らなきゃいけないとか、非常につらい選択肢しか残らないケースもあります。
虫歯は、人から人へうつる「感染症」
—虫歯菌って、最初から誰の口の中にもあるものなんですか?
岡本:それが実は、2歳くらいまでの小さな子には、虫歯や歯周病の元となる定着した細菌は口の中にはいないと言われているんですよ。じゃあどうして虫歯になる子が出てくるのかというと、そうした細菌を周りの大人からうつされているからなんです。
昔の子育てでは、離乳食の時期に親が噛み砕いたものを子どもに与える、なんてことが日常的に行われていましたが、最近は育児雑誌などにも「口移しはダメ」と書かれるようになりましたね。虫歯菌は、唾液を通して親から子へうつってしまいますから。
—キスもダメなんですか?
岡本:キスでもうつりますね。あとは、親が使ったコップやお箸をお子さんが使う、なんていうのも間接的な方法でもNGです。直接でなくても、大人の唾液が付着しているところから虫歯菌が子どもへ感染していくので。お子さんを虫歯のない子に育てないのなら、そういう些細なことにも十分に気をつけないといけませんね。
—唾液感染に注意するしか、子どもの虫歯を防ぐ方法はないのでしょうか。
岡本:あと、やっぱり周りの大人がお口の中をキレイにしておくこともすごく大事ですね。お父さんお母さんはもちろん、おじいちゃんやおばあちゃんも。虫歯も歯周病も菌による感染症なので、その原因がなければうつりません。だから、子どもが大人のコップやお箸をなめないように…といった環境に気をつけることも必要ですが、そもそも大人が口内のケアをして虫歯菌や歯周病菌を減らしておくことが何よりも重要だと思います。
恋人同士のキスでも、虫歯菌はうつる
―――唾液からの感染は、大人同士でも同じですか?恋人とキスすると、虫歯菌がうつったりしますか?
岡本:はい、うつります。人によっては、「今までずっと虫歯がなかったのに、彼氏ができたら急に虫歯ができた」なんてケースも、もしかしたらあり得るかもしれません。
でも、その人の体質とかによって、虫歯の進行度は変わってくるんですよ。だから、キスで虫歯菌をうつされても、虫歯になりやすい人となりにくい人がいますね。たとえば、唾液の量が多い人は虫歯になるリスクは下がります。唾液には抗菌作用、汚れを洗い流す作用などがあるので。また、食事をして口の中が酸性になった状態を中性に戻してあげるのも唾液の力です。だから、唾液がしっかり出ている人は虫歯になりにくいんですよ。あとは、元々持っている歯の質が強いとか、そういうのも大きいですね。溶けやすい歯の人、溶けにくい歯の人がいます。
—体質以外にも、虫歯ができやすい人とできにくい人の差は何かありますか?
岡本:日々のオーラルケアでも差がつきますね。フッ素の入った歯磨き粉を使っているかとか、普段からフロスを使って汚れを落としているかとか、そういうことでも変わってきます。歯磨きの時間が短かったり、隅々まで磨けていなかったりすると、磨き残しの部分から虫歯になっていったりしますね。
また、歯科医院で定期的に歯のクリーニングを受け、お口の中をキレイにしておくこともすごく重要です。そういう口の中から虫歯菌を減らすケアを普段からしていると、だいぶリスクを減らせます。虫歯がうつらないようにするには、【1】うつるような行為をしない、【2】普段から口の中をキレイにしておく、の2点が大事ですね。
—でも、恋人同士に「キスをするな」というのはなんとも酷な話ですよね…。
岡本:たしかに、それは寂しいですよね(笑)だから、大切な人ができたら、まずはお互いが相手に虫歯菌をうつさないためにも、まず口内をキレイにすることが大事だと思いますよ。やっぱり、カップルでケアをしに行くのが最善の方法じゃないでしょうか。ホワイトエッセンスならお二人同時に対応できるサロンも多いので、カップルでいらっしゃるお客様も増えていますよ。
—キスで虫歯菌をうつし合わないようにするためには、お互いが普段から口内環境を整えておくことが大切なんですね。先生、本日はありがとうございました!
(編集・執筆:サムライト)